©︎ 2019 Chateau Clondeaux

ヴォーカルのKyoko、ギターのTakayanagiからなるユニット「Chateau Clondeaux」(以下CC)。

"Story" では再結成にまつわる思いや、結成当時の思い出、さらに自身の音楽のルーツなどを語ってもらった。今回は再結成第1弾シングル「終わらない / In This Pain」について、さらには音楽への向き合い方を聞いてみた。

Text by Yukie ICHIMURA

一体何が「終わらない」のか。どんな「Pain」なのか。

――表題曲の「終わらない」について教えてください。

 

Takayanagi まず “再結成します”という最初の曲が「終わらない」ってタイトルだということ!?

 

Kyoko ポジティブなんだか、ネガティブなんだか。

 

――確かに、歌詞を見てもそうね。

 

Kyoko 今回、最初に歌詞のテーマを相談したの。再結成ってことは1回やめてるけど、また始めるってことは、いつかは再びやめるんだよね。だから始めるってことは、終わりに向かっているということを歌詞にして「終わらない」っていうタイトルに決めた。

 

Takayanagi 最初の1曲めは、僕ら自身のことを歌う曲でいいんじゃないかと。「終わらない●●」というタイトルはよくあるけど、そのままで。「終わらない」何が?って。

 

――何が「終わらない」かは、それぞれが考えてということですか?

 

Takayanagi 投げかけているつもりはないんですけど。

 

Kyoko 「やめない」とかだったらわかるけどね(笑)「終わらない」って、能動的ではないしね。受け身だし、現象って感じだよね。

 

Takayanagi 久々に会って一緒にやってみたら、15年経っていても「終わってなかったね」みたいな感じになった。ギターのリフがはっきりしている曲なので「こういうコンビですよ」ということがわかりやすいかな。

 

Kyoko うん、わかりやすいね。

――「In This Pain」はどうですか?

 

Takayanagi ストリングスが綺麗にリードしていく曲を作りたかったんです。自分の中であれくらいのテンポの四つ打ちの歌モノを作ったこともなかったし。

 

――歌詞はどう?

 

Kyoko 「In This Pain」のテーマは雨。“雨は降っていようが、嫌なことがあろうが、前に進む”というイメージかな。当たり前でしょって話なんだけどさ。

 

――歌詞の中に「Rain」って出てくるね。

 

Kyoko 降っている雨そのものを痛みや優しさとして捉えるみたいな。そんなに世の中、嫌なことばっかりでも、いいことばっかりでもないよね。

――哀愁を帯びたメロディー/曲調だなと感じましたが、その辺についてはどうですか?

 

Takayanagi 僕自身が暗いのか、CCで明るい曲はないね。

 

Kyoko ないね。これまでやっていた音楽もそうだから、“結婚式で歌って”と言われるのが一番困る(笑)

 

――だったら次のテーマで設定してみたら?

 

Kyoko それは無理だね(笑)。もともと私が書く詞についても、メロディは明るくても、ひたすら前向き!ってものはないもの。

 

Takayanagi 悲しい女の歌…

 

Kyoko そこまで極端じゃないけど、ものすごーくネガティブではないね(笑)

Takayanagi 僕もあまり明るい曲は作ったことがない。そういう暗い二人です(笑)

――(笑)

Takayanagi でも音楽だけじゃなく映画とかでも、悲しいもののほうが琴線に触れるというのはあると思う。

 

Kyoko あまりに明るいだけなのって、リアリティがないように感じるんだよね。人生ハッピーなことばっかじゃないというか。

音楽を創るとき

――そもそも曲ってどういう風に作ってるんですか?

 

Takayanagi 他の人はどう作ってるんですかね? 僕はお風呂での鼻歌が多いです。かわいいでしょ(笑)

 

Kyoko おっさんのシャワータイム(笑)

 

Takayanagi シャワー中にずっとフンフンと歌いながらああでもない、こうでもないって言ってるから怖いよ(笑)。お風呂から出て急いで出てギターを弾くこともあるからね。もちろんギターをつま弾きながら作ることも多いけど。

 

――シャワーの時間を創作の時間に充てる、みたいな意識なの?

 

Takayanagi そこまでの意識もないけど、日常的に歌っている感じ。普段の生活はいろいろなことをやりながらだから、何も考えずに本当にリラックスして、ふとした発想やメロディーと向き合える時間は実際にはそういう場面です。あと、料理してる時とか。そうしようと思ってしているわけではないけど。

 

――イメージだけど曲作りって、浮かんだフレーズを紡いでいくとかいろいろあると思うんだけど。

 

Takayanagi ケースバイケースですね。「あ、これがいい!」とすんなりできる時もあれば、ずっと1つのフレーズを転がしながら、半年後くらいにようやくできたという曲もあるし。

 

――今回の2曲はどうでしたか?

 

Takayanagi 割とすんなり。こねくり回しては作ってないですね。

 

――曲のイメージ作りはどうしてるんですか?

 

Takayanagi 口ずさんで作っている時点で、どうしたいというのはイメージがあります。これまでに作った曲も、今回の曲もそうだし。「終わらない」は、僕が好きだった90年代から2000年代の横ノリのアレンジだから古いのかもしれないし、音数も少なくスッカスカなアレンジ。でもCCではどう言われようが自分の好きなものだけを出したいですね。好き勝手やったらいいんですよ(笑)

 

Kyoko もうね、流行ってるとかじゃないよね。流行りにはあまり興味がないから。

 

――そうね。改めてふたりそれぞれの芯というか、それはすごく感じたので。実際に曲ができたら、二人で話して固めていく感じ?

 

Takayanagi 曲に関しては、もう歌ってくださいというスタンス。歌詞も書いてくださいってお願いして。

 

Kyoko で、私が書いて、修正してもらう(笑)。

 

――Kyokoは詩を書くときにどんなことを意識してるの?

 

Kyoko できているかどうかは置いておいて、あんまり現実から遠くないことにはしたいなと思ってるかな。

 

――現実ではない?

 

Kyoko 自分の身に起きたことではないけど、映画や本に出てくるような景色だったり、友だちに起きたシチュエーションだったり。自分のことだけ歌っているとすごく独りよがりになっちゃうと思うんだよね。というのと、自分なりにどこか希望というか、“辛い”という状況を歌っても、その上でどう次にいくのか。諦めであっても進歩だと思うのね。諦めるのかもしくはラッキーなことがあったのかはわからないけど、先がちょっとでも見えるような感じにはしたいかな。全部の曲がそうできているかはわからないけどね。

レコーディングについて

――実際にレコーディングの様子を見させてもらったけど、どうでした?

 

Takayanagi 久しぶりだったし、楽しかったですね。

 

Kyoko そうね。Takayanagiの指示の細かさも、「おっしゃっている意味がちょっとわかりません」って言っている自分も久しぶり。

 

Takayanagi (笑)

 

Kyoko いろいろ懐かしかったよね。これをずっとやってたんだな〜って。

 

Takayanagi 作るからにはやりたいことがはっきりしていないと、いつまで経ってもお互いの手癖だけで終わっちゃうから。コレをやりたいって作っていかないと自分達がモヤッとすると思う。

 

――創作においてそういう部分がなくなったら、ある意味終わりかなとも思うけど。

 

Takayanagi 満足することなんてないでしょうからね。ただ、その時々にちゃんとやりたいことができているかは大事ですよね。

 

Kyoko ゴールはあるんだろうけど、でも本当に難しい。Takayanagiの頭の中で鳴っている音がわからないときは、やっぱり一番大変。

Takayanagi おでこからbluetoothで。

 

Kyoko コピー完了!みたいになればいいんだけどね(笑)デモをもらって、仮歌ももらって、自分なりに歌って。でもやっぱりそれでも違うものがある。今のはデモよりいいから採用でっていうこともあるし。

Takayanagi もともと、Kyokoの中にないものを歌ってもらってるからね。

 

Kyoko 私の持っている引き出しの中で処理できるものは、自分で歌っているところで使っているからさ。そうじゃない空っぽの引き出しをね……。

 

Takayanagi 改めて言うけど、「キャラバンキョウコ」を聴いている人に、こういうKyokoもいるんですよって伝わったらいいなと思っている部分はあります。この声は何を歌ってもある程度ブルージーになるので(!?)違うことをやって初めてそれが輝くと思ってる。和食に白ワインみたいな。今までなかったけど、今となってはスタンダードになっているような。

 

Kyoko プリンに醤油みたいな?

 

――違うでしょ、それはウニだし(笑)

 

Takayanagi 日本酒をワイングラスで飲むみたいな。

 

Kyoko 昔だったら非常識と言われていたようなこともね。

 

Takayanagi そういう文化交流も素敵じゃないでしょうか。って、実際そうなってるかな?

 

――そんなこだわりと大変さが伴った久しぶりの制作活動だったわけですが。

 

Takayanagi 15年の間にお互い変わったところもあれば、変えようと思っても変えられないところもある。そのバランスがすごく楽しいし、全部ひっくるめて大人になったんだね。

 

Kyoko お互いに異なるいろいろな現場で仕事してきて、それに影響されてそれぞれ変わった部分も実際にはあると思う。でも変わろうと思っても変わらないものもたくさんあるっていうことを今回は思ったよ。

 

Takayanagi 歌い手としてこだわったところはある?

 

Kyoko ……いい意味でないのかもしれない(笑)仕事ではもっとかわいらしくとかブルージーにとかジャジーにとか注文されることがあるけど、今回は割と素で歌ったのかな。

 

――自然体であることに努めた、みたいな?

 

Kyoko そうね。

 

Takayanagi 曲を作る側としてこだわったのは、ギターだったりストリングスだったり生音が両方とも引っ張っていて、特に「終わらない」のイントロとアウトロの感じの切ない、映画音楽みたいな感じが出せたらいいなって、それは必ず入れようと思っていました。あと「終わらない」のBメロはベースなし、「In This Pain」のAメロはビートを入れない、そういう引き算アレンジとか。全体的にCCはミュージシャンの二人がやっているという生々しさは残していきたい。

 

――それは今回のテーマ?

 

Takayanagi 今後も含めてですね。今、この二人でやるなら、そういう音作りをするフェーズ。10年以上空くとやっぱり人間も変わりますからね。

 

Kyoko わかんないよ。3作目とかでロボットみたいな声になってるかもよ(笑)

 

Takayanagi 急に?

 

Kyoko そう(笑)。Takayanagiがやっぱこっちかなって言って。

 

――それはそれで楽しみだね(笑)。今回、演奏はどうしてるの?

 

Takayanagi ヴァイオリンやヴィオラ、チェロは弾いてもらって。ギターは自分で弾いてます。

 

――今回の新曲はどこが好き?

 

Takayanagi 琴線に触れるような切ない曲を作りたいと思っていて、実際にKyoko歌ってもらって、あの声が乗って初めて血が通った感じ。

 

Kyoko もらったデモはいろんな人が歌っていて、このバージョンすごい好き、みたいな感じで聴いていて。これを自分で詩を書いて歌うんだって感じより、作品として聴いちゃったから「これでいいじゃん」って最初は思ったんだよね。Takayanagiの頭の中に鳴っている音はよくわからないし、私が聴いていたデモは当然ながら声も歌詞も違うし、自分で歌ったらどうかは、歌うまではわからないの。でも歌ったらちゃんとハマるんだっていうのはよかったなと思う。

――歌うまでわからないものなのねぇ。

 

Kyoko メロディがすごく難しくて、こんな変な歌い回しするの?って思うけど、一回録って聴くと、“おっ、なるほど”って思ったりして、面白くなる。自分がやったことのないこと、普段やらないことをやるっていうのがCCでのテーマだから。ある意味、何も見えていないというか、手当たり次第というか。

 

Takayanagi そこが楽しみで仕方ないんだけどね(笑)自分が作った曲にこの声が乗ったら絶対にこれはハマるなと思っているわけだから。

 

Kyoko それが自分の声を自分が一番わかってないんだよね。客観性というのは全くない。キーの合う合わないはわかるけど、合うはずだっていうのを信じて頑張るだけです。

 

Takayanagi Kyokoの魅力を引き出す、極めてシンプルな法則性が1個だけあるんですよ。

 

――それは何?

 

Takayanagi 苦しそうなところが一番気持ちよく響く。

 

Kyoko あれ、本当に苦しいから!(笑)

 

Takayanagi 上手いからって余裕を感じちゃうと何も響かないから。いいスポーツカーなのにアクセルを踏み込まないのはダメでしょ。

 

Kyoko 本当に苦しいからね(笑)

 

Takayanagi 余裕っぽく、すぐギアチェンジしちゃうから。そこは4速じゃなくて、2速ベタ踏みでいきましょう!

 

――Takayanagi、すごいうれしそうに言ってるね(笑)。Kyokoは今回、高音以外の頑張りは?

 

Kyoko 一番頑張ったのは、反応を早くしたことかな。「終わらない」の歌詞は早く出したでしょ?

 

Takayanagi そうだね。でもどれだけすぐやったでしょ?って言っても、完成までに15年かかってるんだけどね(笑)。15年かかる宿題ってそうそう人生の中でないね。

 

――15年前と今回できたものので変わったことはないの?

 

Takayanagi 厳密に細かい話をしたら、ギターを弾くときも歌うときの気持ちとかも、同じ音符だけどそういうものは全然変わってるでしょうね。落ち着いたっていうと、トーンダウンしたみたいでイヤだけど、やっぱり大人にはなった。

 

Kyoko そりゃ当たり前だけどね。

 

Takayanagi いろんなものがそぎ落ちて、今は自然に残っているものでできている。

 

――それぞれやりたいものをやって、その上で仕事もやって、酸いも甘いも嚙み分けてきて。

 

Kyoko 昔だったら、「無理―!」ってなってたのを、今回は割と素直に聞けたかな?

 

Takayanagi ここから先はミュージシャンとしても人間としても、年相応にどうカッコよくなるか、何を取り入れて、何を捨てていくのかは大事ですよね。今まで以上に、周りがどうかではなく自分の価値観で楽しめないと音楽との付き合いもつまらなくなってしまう時代だと思います。

 

Kyoko 自分のやるべきことややりたいことがシンプルになってきて、その分すごい欲が出てきた。シンプルだからこそ、もっと尖っていきたいというか。

 

Takayanagi アップデートしていけることが、かっこいい大人なのかなと思う。それは音楽に限らずだけど、CCもいい感じで更新していきたいですね。

15年の間で変わったところと変わっていないところ

今はまた「終わり」の始まり。

アップデートしながら“生”の響きを探る